FP Journal Onlineで2025年10月14日公開の「誤解の多い「年収の壁」 社会保険の加入対象拡大でどうなる?」の概要と感想です。この記事では、2025年の年金制度改正に伴う「年収の壁」問題と社会保険の加入対象拡大について、誤解されやすいポイントを整理しながら解説しています。
概要
「年収の壁」の種類と混同されがちな点
- 「年収の壁」は複数あり、税制と社会保険で異なる基準が存在。
- よく混同されるのが「住民税の壁(100万円で税負担発生)」「社会保険の壁(106万円・130万円で配偶者の扶養を外れる)」「扶養控除の壁(103万円R7年から123万円で配偶者控除受けられない)」など。
2025年年金改正の主な変更点
- 「106万円の壁」撤廃:企業規模や賃金要件が廃止され、週20時間以上勤務・学生でないことが条件に。
- 企業規模要件の撤廃:従業員数50人以下の企業も対象に。段階的に拡大予定。
- 個人事業所の対象拡大:従来対象外だった業種(宿泊業、飲食業など)も含まれるように。
社会保険加入によるメリット
- 厚生年金加入で将来の年金額が増加。
- 健康保険から傷病手当金・出産手当金などの給付が受けられる。
- 第1号被保険者(国民年金・健康保険料を全額自己負担していた人)は保険料の半額を会社が負担。
中小企業・労働者への支援策
- 従業員50人以下の企業には、社会保険料の事業主追加負担分を国が補助(3年間の特例措置)。
- 労働者の負担は25%、事業主は75%(通常は折半)。
この改正は「手取り減の谷」を乗り越えた先にあるメリットを理解し、ライフプランや働き方を見直す良い機会になるとされています。必要なら、FP(ファイナンシャル・プランナー)による長期的視点でのアドバイスも重要です。
感想
パートの方はR7年から所得税の壁が20万円引き上げられていますが、これを超えても「配偶者特別控除」があるので、壁の向こうは崖ではなく、下り坂です。
大きな崖は配偶者の社会保険の扶養を外れるかどうかです。配偶者の扶養になれる条件(130万円未満)と、パート先の社会保険強制加入(大企業は106万円以上、中小企業は「一か月の労働時間が正社員の4分の3以上」)の2パターンあります。
中小企業で130万円以上になったが勤務時間が4分の3未満(週30時間)の場合は自分で国民年金に加入しないといけません。
一般的には週30時間より130万円の方が手前にありますから、「130万円未満でお願いします」というパートさんが多いです。
週30時間が撤廃されると、130万円より手前に週20時間が来ます。
つまり、中小企業で130万円ぎりぎりまで働いていた主婦、週30時間までの条件で雇われていたシングルの方、条件改悪になります。
社会保険改悪の支援策として、中小企業は申請により、例として労働者負担25%事業主負担75%とし、事業主の上乗せ負担分(25%)は国が全額補助するとのこと。
協会けんぽ福岡の場合、月収8.8万円では健康保険4,536円年金保険8,052円が本来の負担額ですが、25%負担だと健康保険2,268円年金保険4,026円の負担となります。おおよそ月6時間ただ働きするイメージです。
会社側にすれば、50%負担で12,588円、月収8.8万円に対して14%人件費増です。
パートさんにすれば、社会保険負担が新たに発生するなら、安定性や福利厚生の面から大企業の方がよい、となりますし、会社側にすれば人件費の面でもらっていたハンデがなくなり、経営も人材採用も非常に厳しくなります。