「年金を繰下げて金額を増やしても余命の観点からもとは取れない」「投資の方が有利」という話が話題ですね。
年金繰り下げ受給か投資か、ひろゆき氏が指摘
繰り下げで年金額を増やすと、社会保険料の負担も大きくなり、増えた年金が丸々手取りになるわけではありません。あまりこの点について論じた記事が少ないので、実際に試算してみました。
前提
65歳の見込み年金額:夫200万円、妻85万円、計285万円
なお、社会保険や税金の計算は、筆者の居住地である福岡市の数値を用いています。
繰下げずに65歳から年金を受け取る場合
所得税 非課税
住民税 非課税
国民健康保険料 45993円(世帯単位)
介護保険料 32700円(夫)、20282円(妻)
計 98,975円
70歳まで年金受給を繰下げた場合
年金額は42%増加し、夫284万円、妻121万円、計405万円 となります。
この場合の社会保険料等は
所得税 約10,000円(年金から源泉徴収)
住民税 70,500円
国民健康保険料 196,959円(世帯単位)
介護保険料 107,620円(夫)、74,506円(妻)
計 459,585円
比較すると
70歳まで年金受給を繰下げたことにより、夫婦で年金額は120万円増えましたが、社会保険料等も「459,585円-98,975円=360,610円」増えました。増えた分の約8割が社会保険料です。
平均余命までの期待受給総額
最近の損得議論の発端の橘玲氏は下記のように述べています。
【橘玲氏のX投稿より】
夫婦で暮らす年金200万円の男性が社会保険料等を妻と分担している場合を考えると、下記のようにあらわすことができます。
『65歳時点の年金受給額を年200万円とすると、(平均余命までの)期待受給総額は3894万円(手取り3759万円)。70歳に繰り下げれば年284万に増えるので、期待受給総額は約4430万円(手取り3927万円)』
収入ベースで考えると、70歳に繰り下げれば期待受給総額は536万円増えますが、手取りベースで考えると171万円しか増えません。
実は、年金収入200万円前後には2つの大きな「崖」があります(福岡市の事例)。
・国民健康保険料「5割引(45,993円)」と「2割引(73,589円)」の崖、365万円(夫婦合算)
・介護保険料が「第2段階(32,700円)」と「第3段階(56,707円)」の崖、230万円(一人)
この崖を超えて、年金を増額してもうまみが少ないです。
参考(試算の詳細)
65歳の国民健康保険
年金生活者は国民健康保険料の減免がある?
65歳の介護保険料
年金生活者は介護保険料の減免がある?
70歳の社会保険と税金
| 夫 | 妻 | |
| 年金等 | 284 | 121 |
| 介護保険の「合計所得金額」 | 284-110=174万円 | 121-110=11万円 |
| 介護保険料 | 107,620円(H8福岡市第7段階) | 74,506円(H8福岡市第4段階) |
| 国民健康ほけんの所得 | 174-43=131万円 | 11-43=0円 |
| 国民健康保険料 | 196,959円(別表1) | ← |
| 住民税の「課税所得」 | 174万-43万-33万-介護保険料-健康保険料=655,653円 | 0円 |
| 住民税所得割 | 655,653×10%=65000 | 0円 |
| 住民税均等割り | 5500円 | 0円 |
| 所得税 | 約10,000円 | 0円 |
| 社会保険住民税計 | 385,079 | 74,506 |
(別表1)
| 基礎分 | 高齢者支援 | 子育て支援 | |
| 所得割 | 131×5.58%=73,098 | 131×3.14%=41,134 | 131×0.28%=3,668 |
| 均等割 | 19,807円x2人(2割減)=31,691 | 10,441円x2人(2割減)=16,705 | 1,039円x2人(2割減)=1,662 |
| 平等割 | 18,664円(2割減)=14,931 | 9,838円(2割減)=7,870 | 7,751円(2割減)=6,200 |
| 計 | 119,720 | 65,709 | 11,530 |